Dialog in the Darkと文化庁メディア芸術祭

東京にちょっと戻ったついでに、Dialog in the Dark文化庁メディア芸術祭に行ってきた。
まずDialog〜の方だが、完全予約制(実際は当日参加の人もいた)、高めな値段設定(その日は学生4200円、一般6000円)、
実際に行った人の感想が非常に良い、などもあってかなり期待していた。
現代の生活で、手元も見えないような真暗闇などちょっと経験できない(昔でもありえない?)。そのような空間でどのように感覚が開か
れていくのか、視覚を遮ることで聴覚が開かれるというのはサウンドウォークなどもあるが、それ以上の何かを体験できるのではないかと
期待していた。


参加した感想は、真暗闇は意外にとても落ち着ける空間であったこと(最初は恐怖感があるが徐々に慣れてくる)、真暗闇ではお互いの顔が
全く分からないため初対面の人ともコミュニケーションをとりやすかったこと、音だけでなく匂いが多くの情報を与えてくれること、真暗闇
での体験だったのに視覚イメージが強く残っていること、人の声はその人の性格や体格など様々なイメージを与えてくれること、などが
感じられて面白かった。ただ正直なところ内容についてはまだまだ工夫の余地がある気がした。90分もあるので、もっと諸感覚を刺激させる
ような試みが色々とほしかった。

暗闇の中で安心感を感じたのは、声による一体感、触感、気配、匂いから近くに人がいることが感じられることなどが相当大きい気がした。
もしも、一人で声も聞こえず人の気配もない真暗闇の中を進んでいくとしたら、それでも暗闇の恐怖に慣れるだろうか。我々をアテンドしてく
れた全盲の方は(音は聞こえるにしても)現実に一人で真暗闇の中を生きているわけで、彼ら(彼女ら)にとってはあの空間が現実の日常で、
視覚以外の身体感覚をフルに活用して日々生きているのだということに改めて気付かされた。


メディア芸術祭の方は、入った瞬間ゲーム会場かと思ったが、なかなか興味深かった。プレゼンテーション会場では、google earthを使った
温暖化による海面上昇で沈没しつつあるツバルをフィーチャーしたプロジェクトなどを紹介していた。サウンドマップの場合、例えば
freesoundのgeotagged samplesのように、単にgoogle map(google earth)を使って、ユーザーが録音した地点に自由に音をアップして共有する
形の音地図などは既に色々ある。しかし、例えば、録音地点から聴く方向や高さ、距離(ズームイン、アウト)を変えるとそれに合わせて音が
リアルタイムに変わるようにできたらより面白いだろうなと思う。


あとはブラウン管テレビの映像入力に音声を入れて、画面に映る走査線の画像を写真に撮って、ビデオテープで再生し、テレビを並べて音階を
作り、ギターアンプのプラグを身体につけたアーティスト本人がテレビのモニター画面をたたくことで演奏するパフォーマンス(自分で書いてて
意味不明笑)をやっていた。ブラウン管に写った走査線のレトロフューチャー的映像とアナログのパッチシンセのようなノイズパーカッシブな音
の組み合わせがおもしろかった。どうでもいいけど(いやよくないけど)、プレゼン会場で、自分の近くに座っていた人が「death...death...
death...(時折微妙にクフと笑う)」とか終始呟いていたのが、非常に気になった。